今、敢えてそのバイクを選ぶ?FZ1 Fazerがやってきたぞ!

●「YAMAHA FZ1 Fazer」って知ってる?

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FZ1 FAZER YSP特別エディション

それはかつてYAMAHAが販売していた1000ccのバイク。

伝統の5バルブ4気筒エンジンを搭載した最後のバイク。

それが「FZ1 Fazer」

レースをイメージしたFZRシリーズと同系列ながら、気軽に使えるライトウエイトスポーツとしてハーフカウルあるいはネイキッドで販売されていました(一部フルカウル装着車もあり)。排気量も250cc、400cc、600cc、750cc、1000ccと多種多様に渡り、長年YAMAHAスポーツ車として活躍してきました。

その中でもFZ1の国内仕様は、様々な規制などの狭間で揺れ、中途半端な立ち位置となってしまい、ちょっと不人気と言われる部類に入ってしまうバイクでした。

 

●FZシリーズってなんだろう?

今でこそYAMAHAのバイクと言えば、スポーツのYZFシリーズ、マルチのMTシリーズという系統となっていますが、1980年代のスポーツバイクブーム初頭の頃はYAMAHAと言えば2stと言われていました。RZ350/250というパワフルかつ軽量な2stバイクがあちこちを走り回っていました。

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特にRZ250は車検がいらない軽二輪であり、当時としては強烈な35ps/3kgf・mを誇り、瞬く間に市販スポーツバイクの雄として知名度を上げていきました。

その頃、暴走族が社会問題となったこともあり、自動二輪の免許が「小型限定」「中型限定」というように分けられました(今は更に変更され、普通二輪と大型二輪という別免許になってしまいました)。自動二輪の免許自体は教習所でも取得することが出来ましたが、大型に乗るためには「中型限定」を解除しなければなりません。この限定解除は試験場でしか受けることが出来ず、しかも前記問題のため大変狭き門となっていました。このことから、中型限定で乗れる最大排気量の400ccクラスが大人気となったわけですが、その400ccをもカモれる250cc、というのがRZ250でした。

が、そこにHONDAが4stで殴り込みをかけてきます。HONDAも「NS250」という2stがありましたが、4stでRZに追いつけ追い越せとレースの技術をフィードバック。その頃の4stは小排気量ではとても2stに追いつけないと思われていたのですが、満を持してVT250を発売。35ps/2.2kgf・mとトルクこそ細いものの、当時としては驚異的な12500rpmからのレッドゾーン、しかもそれすら超えて悠々と回る、回りすぎてオーバーレブする、という事から後にレブリミッターが装着されたほどの元気なエンジン。

最終的にRZもVTも43psまでパワーアップしましたが、YAMAHAもついに4st、SUZUKIにこそクラス初4気筒は先んじられたものの、その後しばらくの間主流となる4バルブの「クォーターマルチ」として「FZ250 PHAZER」を発表。レブリミット17000rpmという超高回転な、まるでモーターのようなサウンドを響かせる原点となりました。

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そのFZ250の設計にも引き継がれたのが、FZ750という750ccバイク。「GENESIS」エンジンと呼ばれた設計思想の元、5バルブ4気筒エンジンを45度傾斜させて配置、低重心を図ったスーパーバイク?として1984年に発表されたものです。

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ハーフカウル、角目二灯という斬新なスタイル

脈々と続くFZシリーズは、このFZ750から始まったのです。

 

FZ1に至る経緯は?

YAMAHAはFZ750でも各種レースに参戦していましたが、二輪も日々進化しています。そんな中、FZ750を改良されたレース用の車体、FZRシリーズが発売されます。

このFZRシリーズ、750ccはもちろんのこと、1000cc、400cc、250ccと様々な排気量で発売されました。特に免許制度の関係で販売が好調だったのがFZR400。

ところがレプリカブームが終焉を迎えると、この手のフルカウルのバイクというのはなかなか売れ行きが厳しくなっていき、1台、また1台とどんどん姿を消して行きました。

その代わりにやってきたのがビッグスクーターブーム。ビッグとはいえ、主流は250ccのスクーターがメインでした。スクーターですので、今まで作ってきたクォーターマルチエンジンは使えません。各社ともカウルを外したネイキッドバイクにそれまでのエンジンを搭載し、市場は少ないながらも販売していましたが、ついにそれも終わらざるを得ないときが来ました。排ガス・騒音規制が厳しくなったのです。

ただ、幸いだったのが大型車です。

免許制度が変わったと同時に、今までは厳しい試験をパスしないと乗れなかった大型バイクですが、なんと教習所でも免許が取得可能になったのです。

このことにより、従来は国内では「マイナー」とさえ言われていた大型がグッと身近になり、それに伴い大型バイクも少しずつではありますが市場に浸透していきます。

とはいえ各社共にパイの小さい日本市場向けには大型車をすぐに用意できるわけではありません。そこで取られたスタイルが俗に言う逆車というパターンです。

しかしこれもほんの数年、それ以降は徐々に日本国内向けに「デチューン」されたバイクが店頭に並ぶようになります。

 

それが大きく変わったのが2007年7月。折からの大型バイク販売増加により、国内向けバイクのみ自主規制を設けるのは企業としても余計なコストになるし、何より逆車はもちろんのこと、フルパワーでやってくる海外メーカーにも太刀打ち出来ない、という状況から自主規制が撤廃されました。

実はこの自主規制は小型車や中型車にも適用されており、撤廃後は小型車、中型車でも従来のようなパワフルなバイクが出てくるのでは、と期待されたのですが、それ以外の国の基準、騒音規制や排ガス規制により作ることが困難になっていました。

大型バイクは排気量に余裕があるため、自主規制撤廃の恩恵を受けましたが。

 

さて、やっとこさFZ1の話に戻りますが、FZ1はFZの1000cc車の2代目に当たるバイクになります。初代は2001年に発売されたFZS1000です。当時は逆車として日本で発売されていました。

しなやかな鋼管パイプフレームにYZF-R1の5バルブエンジンを搭載したライトウエイトスポーツとして海外で販売され、主にストリートバイクとして好評を得ていました。

それが2代目へモデルチェンジしたのが2006年、今までとは一転、強固なアルミフレームに倒立フロントサス、ロングスイングアームなどを搭載した、まさにスパルタンなネイキッドストリートバイクとして発売。従来のファン向けにもハーフカウルを搭載したバージョンも発売されました。

エンジンは引き続きYZF-R1譲りの5バルブエンジン、まさにFZシリーズの血統を引き継いだバイクです。

デビュー当時は初代と同じくYAMAHAの正規輸入車プレストにより逆車として販売されていましたが、なんと2008年、国内仕様が発売されることとなり、同時に逆車は終了となりました。

が・・・その国内正規販売にあたってファンが気になった点が1つありました。

「発売時期が微妙なんだけど、自主規制受けるの?」

自主規制が撤廃されたのが2007年7月、FZ1が正式に発表されたのが2008年1月、販売は同年2月からスタートです。ただ国内版が出るという話はそのずっと前から話題となっていました。

2008年2月から販売ということは、2007年7月にはもう生産開始している頃です。

逆車と同じくフルパワーで出るのか、それとも自主規制を受けた形で出るのか、そこがやきもきされたところでした。

正式発表の2008年1月、その諸元表を見たファンは絶望。

なんせ最大出力は150psから94psへ最大トルクも10.8kgf・mから8.2kgf・mへ大幅ダウンとなり、乾燥重量も199kgから205kgとアップ。プレスト販売の逆車と比較すると、メリットは「イモビライザーが装備されている、ちょっと価格がお安い」の2点のみ、となりました。

YAMAHAは「国内の道路事情に合わせて扱いやすいようにリセッティングした」ということでしたが、一般的な目からは「単なるデチューンやないか!」と写りました。何よりその直後に販売されたYZF-R1が海外版と同じフルパワーであったことにより、余計このFZ1のリセッティングがマイナスポイントとして捉えられる様になってしまい、R1譲りのエンジン廃熱は熱いのに走りはぬるい、など散々な言われよう。

それでもハーフカウルを装着していることから、国内ではどちらかというとツアラー向けにFZ1-S、ネイキッドのFZ1-Nは街乗り用にと言われ、またマイルドになった事により初心者にも優しいという評判もあり、まぁまぁ安価な価格もあって一応は売れていました。しかしこれも長くは続かず、2011年に後発で発売されたNinja1000が完全に同じジャンルで被り、遂に2015年でFZ1は生産終了となりました(ネイキッドのFZ1-Nは2012年終了)。

入れ替わりで発売されたのがMTシリーズです。TDMをも取り込んだMT-09 TracerがFZ1-Sのポジションとなりました。ネイキッドのMT-09はその前の年、2014年に発売されましたので、これを持ってFZ1の役割は終わった、ということに。

ご存じかもしれませんが、MTシリーズはグローバル展開するに当たり基本となるプラットフォームを統一し、コストの削減も図る目的で開発されました。その先鋒となったMT-09、Tracerそして兄弟車のMT-07はそのパワフルな走りと軽い車体、そして何より安価なことから大人気となりました。

今ではさらに幅広い排気量にMTシリーズを展開しています。

 

FZ1(国内版)は規制に翻弄された悲しいバイク、とも言えなくもないかもしれません。

 

●うちにやってきたFZ1 Fazerは?

国内ではさっぱりなFZ1 Fazerでしたが、個人的には大変好みのバイクでした。

(当時はこのリセッティングなどの事も知らなかったw)

YSPでセンス良くアフターパーツを纏ったFZ1 Fazerを見たときは、こいつ欲しすぎるだろう!と思ったくらいだったのですが、諸般の事情により当時は購入することが出来ませんでした。

ですが幾多の歳月を経て、遂に我が家へFZ1 Fazerが来ることに。

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2008年型EUモデル!

基本的に自分がバイクを選ぶ際は、ハーフもしくはフルカウル(ビキニカウルは×)をと決めており、実際乗ってきたバイクもほとんどがカウル付きです。

過去1度だけネイキッドを選んだことがあったのですが、長距離走行での疲れが全く違ったことからカウルは必須としています(レプリカブームなのになぜかネイキッドを購入した・・・)。

普段の使い勝手から考えるとハーフカウルがベストな気がします。

 

このFZ1 Fazer、2008年型のEUモデル、おそらく並行輸入車だと思われますが、EUモデルだけあってイモビライザーが装備されています。そして珍しいことにABSも装備されています。EUでは2016年からバイクのABSが義務化されていますが、そもそもこのバイクは2015年で生産完了しているため、その範疇には入っていません。にもかかわらずABSモデルがあるということは、EUの安全意識の高さを反映している、ということなんでしょうか?よくわかりませんがw

今でこそABSを装備したバイクがごく普通になっていますが、2008年頃はまだバイクにABSが必要?とまで言われていた頃。

なお、北米モデルや国内モデルでは最後までABSが装備されませんでしたので、ある意味ABS付きのFZ1は貴重かもしれません。

 

大変程度の良い車体を譲ってもらいましたが、あとドライブレコーダーくらいは付けたいな、と思っています。